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four column house / 三業通りの住宅

 新建築住宅特集 2018年6月号 掲載                                                                                                                                                                                                              photo│jumpei suzuki   

大塚・三業通りの住宅

木造3階建て│敷地面積:54.69㎡│建築面積:32.40㎡│延床面積:94.30㎡

かつて花街として栄えた通り沿いの敷地に建つ木造3階建ての住宅である。

ここでは、「やりたいこと」に向けて物をつくり替えたというよりも、個々の物の置き方を慎重に選ぶ方法をとった。行ったことの1つは、2階の床の位置を極力低くし、道路と近づけたことだろう。かつての花街では芸妓さんが2階の窓の手すりに腰掛けて手を振っていたようで、そうした距離感もいいなあと考えていた。窓には、茂みに隠れつつ通りを見渡せる緑化の設えがなされている。道路を歩くと井桁の木構造がチラリ見える。柱梁は、果物の芯のように上下階を貫いて、日々の生活に寄り添っていく。平面形状からは容易に6本柱のドミノや三内丸山遺跡が類推される。最終的に4本にされたのは、阿弥陀堂のような中心性をもつ形式に、わたし達がそれを誤認して住んでいるような、強い形式と柔らかい生活の重なりをイメージしたからだ。柱を露出させたらそれはもう象徴性以外ないのではないかと思う。演出家の鈴木忠志は「センターをつくれ」と役者に言うことがあるそうだ。芝居は観客の前で行われるけれど、それ以前にどこかにいる神に向けても行われていて、それを観客が同席して観ている。だから演者と観客の間には演じる目標としてのセンターがみえてこないといけないという。この住宅はもちろん住まい手のもので、住まい手のために設計したけれど、同時に他のもののためでもあるような住宅を目指した。男性的な強い4本柱の形式と、透明感のある女性の化粧のような白とシルバーの塗装やアルミ箔貼との、両性具有的な重なりも、物への寄り添い方の同様の姿勢である。

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