100 year lasting earthen floor / 上大岡台・百年土間
photo│jumpei suzuki
上大岡台・百年土間
木造2階建て改修│敷地面積:222.53㎡│建築面積:73.35㎡│延床面積:118.07㎡
1964年、東京オリンピックの年に建主の祖母が建てた住宅のリノベーションである。地主だった祖母の土地は京浜電鉄敷設時に区画され、近くのいくつかの土地に分散したそうだ。建主の親世代がそれらを受け継いでいる為、この家は親戚の拠点として祖母が亡くなった今でも同じように機能していた。垣根を越えて庭から窓越しをコンコンと叩く光景は、どこか懐かしくもあり、流れる時間も境界もルーズな関係であった。家族や親戚にとって、山や海や川のような、大らかな場所をここにつくりたいと思った。祖母の家を次世代が引き継ぐというよりも、新旧の対比に意味を求めるというよりも、今までもこれからもここにあるという感覚の建築化。土間からは祖母の大事にしていた和庭園が開口いっぱいに切り取られ、その庭では昔と変わらず、パラソルの下で子供がビニールプールではしゃいでいる。垣根を越えて来た訪問者といつしか一緒になって土間を行き来する。床レベルが庭と近くなることで、子供達は素足のまま自由に歩き回る。土間はこの家の中心であり、訪問者を受け入れる玄関であり、集いの場となる。
既存建物は建設当時の状態から増改築が繰り返されており、構造的にも決して安定した状態とは言えなかった。特に基礎は鉄筋探査の反応も鈍く、基礎補強と地中蓄熱式床暖房を兼ねた土間コンクリートとし、柱との緊結補強を行った。長年に渡る雨水の侵入で腐っていた木部箇所を撤去し、不要な開口部は耐力壁として補強した。痛みの激しいいくつかの柱は入れ替え、そのうち土間中央の2本は鉄骨柱とするとともに、家具の構造と一体化し、土間に浮く大きなテーブルで客人をもてなすつくりとした。室内の仕上材料には既存住宅で多用されていたラワン材を主につかっている。